
・科学は、学校の実験室に閉じ込められているのではなく、身近に、また地域の離れた世界のあらゆる局面に存在することを示す。
・科学は、人間的側面をもっていることを示す。
・科学、技術そして社会の間の相互作用に関する興味に自信をつけさせる。
・環境における技術活動の影響を熟慮する必要性と、環境破壊を最小限にくい止める必要性を示す。
・科学は、孤立した研究分野ではなく、地理、経済、歴史のような他の専門分野と相互作用しあっていることを示す。
・生徒が事実に基づいて討論したり、他人の討論を聞いたり判断したりすることに自信をつけさせる。
・読書と理解、データの収集と分析、情報の検索、問題解決、及び意思伝達の技能を含むある程度の技能を鍛えるための機会を与える。
4 最近の認知研究に基づく学習観と環境教育
我が国でここ10年ほど話題となってきた認知研究の立場は、「構成主義」と呼ばれています。理科や算数・数学など堅固な学問を背後に抱えた教科領域において、この立場からの研究が盛んになされてきました。ここでの(構成主義」の立場も簡単に一くくりにできませんが、概ね次のような学習観をもっていました15)。
?@知識は、経験や情報をもとにして能動的に構成される個人的なものである。教師によって伝達されるものをそのまま受容するのではない。
?A学校での学習には、教室や実験室での学習環境だけでなく、その外(授業外・学校外)から持ち込んだ既有の知識や信念が大きくかかわっている。
?B学習に最終的な責任をもつのは学習者である。学習課題にどんな注意を払うのか、それに自分なりの解釈をし意味を構成するか否か、その意味をどう評価するかなどは、本質的に学習者自身に依存する。
?C学習者たちが構成する意味の中にかなりの一致が見られる。考え方は原則的には一人ひとり異なっているが、その中にもある種の類型が認められる。
この学習観の核心は、学習者個々人による能動的構成にあります。この立場から、学問上の知識の系統に沿った授業を順序よく進めても、必ずしも学習者には理解されず「つまづきや誤解」が起こること、またその「つまづきや誤解」は類型化されることがあること等が解釈されました。そして授業以前にその授業での学習課題について、学習者が既に有する考え方を探ること、並びにその考え方を学問的な考え方へといかに修正あるいは転換させるかを検討することが研究の焦点とされてきました。
さて1990年頃からの認知研究においては、「社会的構成」、「文脈依存性」、「概念の生態系」、あるいは「状況的認知」などといった術語が目につくようになりました。未だ研究者の共通理解とはなっていませんが、少なくとも以前の「構成主義」が「学習者個々人による固有な意味の構成」に力点があったのに対し、次第に知識や考え方が社会的に構成される、社会的な相互作用を通して構成されるという捉え方へと重点移動が見られます。とりわけ先鋭的な「状況的認知」の立場は、端的に言うなら「学習は社会的な実践の一部である」、「学習とは社会的実践の共同体に参加することである」とする見解をもっています。16)理科学習を例とすれば、それは科学という社会的・文化的実践の共同体に参加することである、ということになります。少なくとも学校での理科学習は、現実の社会や文化の中にある科学の実践共同体へ児童・生徒が
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